『ディセンダント ライズ・オブ・レッド』を見た感想🧁
『ディセンダント』シリーズの約5年ぶりの映画新作、『ディセンダント ライズ・オブ・レッド』がとうとう配信開始されたので見ました!
ディセンダントとは
『ディセンダント』シリーズとは、「もしディズニーヴィランズ=悪役に子どもがいたら」というコンセプトで、有名なディズニーキャラクターやヴィランズの子どもの世代が活躍する、ディズニー・チャンネル発のミュージカル映画シリーズです。
前作までの主人公、『眠れる森の美女』の悪役であるマレフィセントの娘・マルにかわり、シリーズ4作目となる本作の主人公は『不思議の国のアリス』に登場するハートの女王の娘・レッド。
登場人物が大きく変わる今作で、「新たな風」の部分と変わらない「ディセンダントらしさ」の部分がどのように表現されるのかが最も注目していたポイントでした。
また、過去に別作品でシンデレラと王子を演じたブランディとパオロ・モンタルバンによる再演もウキウキポイント。(詳しくはこちらもチェック↓)
yuzuhaume-osanpo.hatenablog.com
見た感想 ※ネタバレ注意
世界観・CGの違いを楽しむ
前作から約5年ということもあってか、世界観の作り込み方やCGの使い方の違いを感じました。物や建物が雑多に並ぶロスト島の雰囲気は大好きですが、それとは異なる「アート」な感じをワンダーランドから受け取れます。
また、魔法のエフェクトが素敵。『Red』曲中で飛び散るスートを見たとき、すごくワクワクしました。
これまでの『ディセンダント』には無い演出の感じが「初めて見る未知のもの」「強い力」を連想させ、例えばハートの女王がクーデターを仕掛け、大きなトランプのようなものを壁として出現させたときには、ハートの女王に対して「これまでのキャラクターたちとは全く異なる、別の力を使う新たな脅威」と感じられて、未知のものに出会うワクワクを感じました。これまでの作品で、デカめの構造物をいきなり出現させるキャラクターってあまりいなかったんじゃないでしょうか?
ディズニー版学パロが始まった…!
もともと『ディセンダント』シリーズは、「もしディズニーキャラクターに子どもがいたら」という「もしも話」から展開している作品ですが、今作になって「タイムマシン」という存在が登場したことにより、主人公たちはディズニーキャラクターたち=親世代たちの学生時代に行くことになります。これにより、「もしディズニーキャラクターたちが同じ高校で学生生活を楽しんでいたら」というコンセプト(いわゆる学パロ)の展開を可能にしているのが面白いなと思いました。
ここまでくると、原作たちとは乖離した設定になってくるので(アラジンとジャスミンが高校でつきあってたり)、本家とは完全な別物、それこそパロディとして楽しむのが一番ちょうどいい距離感なのかもしれません。半グレ集団のように大勢で群れているヴィランズたちに解釈違いを起こす人は多そうですが、私は「これは学パロだ」と完全に割り切るつもりで見ていたので、半グレ集団に一組いるクール系女子とオラついた男子のカップルの役割がマレフィセントとハデスにあてがわれているのを笑って見ていました。
こう解釈するか!
のオンパレードでした。
一番は「ハートの女王」。我々はもう、その名を聞くと怒りっぽくて色の彩度高めな(黒、赤、黄のイメージ)女王様をすぐに思い浮かべてしまいますが、「ハート」という言葉と「女王」という言葉それぞれから受ける印象を素直に組み合わせて具現化した結果の一つとして、ブリジットのような、ふんわりとしたピンクのフェミニンな女の子、的な印象のキャラクターはあり得そうなんです。
不思議の国のアリスのハートの女王はトランプとの関係性が深いキャラデザですが、トランプと切り離した「ハートの女王」の一つの在り方が見られた気がして面白かったです。
これを踏まえると、ブリジット最強じゃない? と私は思いました。ブリジットは本作で、厳格な「いわゆるハートの女王」のスタイルと、皆にハートを振りまくピンクを基調としたキュートな女王のスタイルの両方を着こなす人物として描かれているからです。
それすなわち、作中で両方の側面のブリジットを演じているリタ・オラが最強、ということでもあるのですが、ブリジットのキャラクターとしての魅力には注目せざるを得ませんでした。
他にも「こうなるのね!」と思ったのはシンデレラのタフさ加減。
かなりサバサバした、現実主義な人物として描かれていましたが、よく考えるとあの家庭環境で生き抜こうとすると、自然とあれくらい強くなっていてもおかしくないんじゃないでしょうか。ちなみに本家のシンデレラも、とりわけ『シンデレラII』『シンデレラIII』でタフな一面が垣間見えているので、その点との親和性も感じて嬉しくなってました。
『シンデレラ』は見ておいて正解だった
物語が『ロジャース&ハマースタイン シンデレラ』と繋がっているわけではないだろう、というのは大方予想通りでしたが、それでもシンデレラと王子が揃うと「これよ、これ」とテンションが上がりましたし、きっと制作側の人たちもそこにリスペクトを持っていたから「2人にも少しデュエットしてもらう」という選択をしたのではないかなと思っています。
ちなみに両作ともディズニープラスで鑑賞したところ、シンデレラと王子の吹き替えは同じ方が担当されていたのでハッピーになれました。
「人ってこんなに変われる?」これまでの主題に疑問を投げかけ始まる物語
シリーズの第1作目は、ヴィランズの子どもたちが愛や友情、新しい世界や夢中になって打ち込めるものとの出会いを通じて「良い人になりたい」と決意し行動を起こすまでの物語でした。それ以降も、「正義と悪は紙一重」というテーマを根底に持ちながらシリーズ展開し、「人は変われる」はシリーズ全体のメッセージのような、前提のようなものだったと感じています。
それに対し今回の新作は、高校時代のブリジットやエラを見たレッドとクロエの「人ってこんなに変われるの?」という疑問から物語がスタートします。
これまでのシリーズが主題として取り扱ってきたテーマに疑問する形から新シリーズが始まる、というのが、私的ときめきポイントでした。
序章にすぎない
鑑賞後、最初に抱いた感想は「これは序章にすぎないんだろう」でした。
そう感じたのはなぜなのか、今になって落ち着いて考えてみると、思い当たる点が大きく2つあります。
①タイムトラベルものにあるあるのあれがない
タイムトラベルにつきものなのが「タイムパラドックス」。過去や未来を変えた影響で、現在に戻ったときに大きな不都合が起こっている状況です。これをどうにかして元の時間軸に戻したり戻さなかったりする様がタイムトラベルものの面白さの1つになっているのではないでしょうか。
しかし本作は、行って帰ってきたら問題が全て解決していた(ように見えた)のです。そのため、「思ったよりも単純に事が解決したなあ」という印象を受けました。親の時間軸をいじっているので「レッドかクロエのどちらかが生まれなくなってしまう!」みたいな(ベタだけど王道な)問題とかが起こることをあれこれ予想していただけに、いつの間にか本編が終わってしまっていました。
とはいえ、次を予感させる最後のウーマの語りのおかげで、今回私が期待していたような問題は今後起こるのではないか、と思わせてくれたので全て許しました。
②変わった理由の深掘りが欲しかった
今回のテーマである「なぜハートの女王は変わってしまったのか」について、「ダンスパーティーでひどい目にあった」という解答は提示されましたが、実際の様子がほとんどわからないため、「本当に、あんなに素直で優しく強いブリジットが、それだけで愛を信じなくなってしまうのだろうか」とまだあまり腑に落ちていません。あれだけポジティブで強いブリジットなら、ダンスパーティーでひどい目にあっても立ち直れそうとすら思えるからこそ、そんなブリジットを打ちのめした出来事の詳細が気になるところです。
同じく、王族を嫌うエラがいかにして今のシンデレラのようになったのか、のプロセスも本作ではあまり語られていないので気になります。
このように、見終わってもなお疑問と考察を生み出す本作は序章として素晴らしいものだと私は考えているので、ぜひ!続編をつくってほしいものです。
最後に
前3部作のファンの方は大勢いたと思います。だからこそ、今回のメインキャストを入れ替えた作品はきっと、制作側にとっても見る側にとってもチャレンジとなる作品だったと思います。
私も見ていて、あの4人や他の仲間たちにほとんど出会えない寂しさを感じましたが、同時に、
外交や、新校長の業務や、大学のトーニーの試合で、
それぞれ次の道を頑張る彼らの存在をほのかに感じ、姿は見れなくても想像してエールを送りながら、新たな人やモノとの出会いを楽しむ、そんな体験ができました。卒業・入学の時期のセンチメンタルな感じに似ていますね。
最後に、
私個人の本作のハイライトは、『Life Is Sweeter』でした!
ディズニー・チャンネルのミュージカルのここすきポイント(生活がハッピーになるような原動力を得られる感じ)と本作のここすきポイント(素敵な魔法のエフェクト)の両方がこのシーンに詰まっていると感じてます。
人生の「スパイシー」な瞬間に遭遇したとき、この曲を鬼リピートしたいと思います。